切手の思想家たち2024

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

2020-01-01から1年間の記事一覧

2020年のエジプト切手(タラアト・ハルブとミスル銀行100年他)

郵趣サービス社の国別切手頒布会には、アメリカとエジプトに加入している。研究対象がマルクス、レーニン切手や人物切手なので、国別はそれほど凝っていない。エジプト切手は、日本国内に入る絶対量は不足しているので、どうも『郵趣』では積極的には掲載せ…

エミリウス・ベレンツェンによる女優ヨハネ・ルイーズ・ハイベルクの肖像画

ヨハネ・ルイーズ・ハイベルク (1812-1890) は19世紀のデンマークの著名な女優で、その自叙伝もいまだに読まれているらしいが(未読)、特にキルケゴールの有名な著作「危機および一女優の生涯における一つの危機」のその「一女優」としての方が日本では馴染…

年賀切手(1935年)

今月の『郵趣』の内藤陽介さんの連載「日本切手150年の歩み」は、日本最初の年賀切手についてだった。 この切手は拡大するとかなり味わいのあるもので、題材は渡辺崋山の「富嶽之図」から採用し、内藤さんの解説だと切手原画には、もともとの崋山の作品に描…

ヨハン・シュトラウス2世

今日は、「美しき青きドナウ」などのワルツで知られるオーストリアの作曲家、ヨハン・シュトラウス2世(1825年- 1899年)の誕生日でした。というわけで以下の切手を。 両方ともオーストリアで出された切手で、特に左側の1967年に発行された「美しき青きドナ…

昭和50年代・平成の使用済み記念切手への関心

今月号(2020年10月)の『郵趣』は、「伝統工芸シリーズで作る競争作品~昭和50年代以降の記念切手で競争作品を作るには~」が大きな特集だった。僕のような子どもの頃に集めていて、また最近再開した人にとっては面白い企画で、いままでの生活では特に注目…

最近の政治的なウクライナ切手の面白さ

最近のウクライナの切手に少し関心がある。90年代までは明らかにロシアに切手制作を委託していた可能性があるが、最近は違って自国制作で面白い。この2020年に出たウクライナの団結を示す地図切手は、ロシアに実効支配された東部二州が明記され、さらにドネ…

ドイツのヘーゲル生誕250年記念切手

ドイツからヘーゲルの生誕250年記念切手が発行された。 ヘーゲルの切手は東西に分かれていた時に各々出たのと、戦後のソビエト占領地域でも普通切手で出ている。統一ドイツでは初めての発行で、いままでのヘーゲル切手が比較的厳格で気難し気な相貌だったが…

ルース・アイコ・アサワ

最近アメリカで出たルース・アイコ・アサワ(1926-2013)の記念切手。素晴らしいシート構成。彼女の代表的な作品である天井から吊るされた造形物など特徴的な作品群と鋭い眼光の肖像写真がシート地を引き締める。戦中の日系人収容施設で始まった彼女の芸術の…

アンゴラのレーニン切手

アンゴラが1970年代末~80年代に社会主義体制を敷いてた時に発行されたロシア革命70周年を記念したレーニン切手。実はこの切手の存在は見落としてました(笑。今日、切手の博物館で行われた切手バザールでなじみのお店でたまたま見つけました。よかった~。

ペルー日本人移民120年切手

今月のWorld Topics(郵趣サービス社が行っている切手頒布サービス)は、ドイツのベートーベン誕生250年切手、マカオのタイパ線開業(ゆりかもめと同じシステムで日本企業が国際入札して完成)切手の他に、ここでとりあげるペルーから今年出た日本人移民120…

インドのファッション切手

今年出たインドのファッション切手。インド切手を特に集めているわけではないが、人物切手としてはインド国内では知られてはいても海外では(特に西欧目線では)知られていない人たちが多く注目している。独立前後から1970年ぐらいまでは収集していて、一部…

ジェームズ・クック船長とエンデバー号、オーストラリア大陸上陸250年

「クック船長」の通称で知られるイギリス軍人のジェームズ・クック(1728年- 1779年)がオーストラリア大陸に上陸したことを記念する素晴らしい切手がオーストラリアから出ました。 ちょっといまさら個人的に驚いたのが、わずか250年前には西洋社会にとって…

ロダンの切手

ウォリス・フツナ(フランスの海外準県)から1987~92年にかけて発行されたロダンの切手三点。制作はフランスで、さすがの名品。もうひとつは2017年にフランスから出たロダンの切手。切手帳に挟んで、窓から切手本体が出ている。

チェコとスロバキアの切手

旧チェコスロバキアは複製芸術の極致ともいえる切手を発行してきたが、チェコとスロバキアに分かれてからも優れた切手を発行し続けている。チェコの最近の美術切手から三種類。スロバキアからはプラハの春を記念した小型シート。この小型シートを郵便に貼り…

伝統工芸品シリーズ

今月号の『郵趣』はあまり僕の関心とかぶってない記事が多いけど、それでも読むといろいろ興味深い。巻頭の1984年から86年にかけて出た伝統工芸品シリーズを利用した切手展に出品して審査をうける競争作品の作り方はためになった。しかしこの時期の日本の切…

吉田一郎と蒙疆(もうきょう)切手

吉田一郎、といってもほとんどの人は知らないだろう。僕も10月号の『郵趣』で、内藤陽介さんの連載「日本切手150年の歩み~郵便創業150年に寄せて」の最新回「逓信記念日制定記念小型シートの発行(1934年)」を読んで改めて想い出した。吉田一郎は戦前の日…

ヒルマ・アフ・クリント

ヒルマ・アフ・クリント (1862–1944)は、スウェーデンの芸術家だが、その作品は日本ではなじみがないかもしれない。僕自身、今年発行された彼女の切手でその存在を初めて認知した。抽象画の先駆者であり、その作品には霊的世界観が反映されているという。 こ…

「JPS航空郵趣研究会展2020 ー飛行機の消印ー」とアメリカ航空切手

先週、切手の博物館で「JPS航空郵趣研究会展2020 ー飛行機の消印ー」に行きました。趣味的には門外漢なので、デッドカントリーの航空切手が未使用で揃っているのに綺麗だな、とか、特にブルーインパルスの医療従事者への感謝飛行のフレーム切手の初日印を集…

石橋湛山

9月25日は、元首相、ジャーナリスト、そしてリフレ派の祖である石橋湛山の生誕日でした。湛山の切手はないので母校の早稲田大学の大隈講堂切手を。 石橋湛山については学会での報告や雑誌への寄稿などかなり多く書いています。 ここではネットで読めるものを…

ヴェルサイユ条約発効100周年と山形浩生訳:ケインズ『平和条約改訂案』

今年は第一次世界大戦の休戦をうけて開催されたパリ講和会議(1919年)で決議されたヴェルサイユ条約が翌年(1920年)に発効して100年を迎えます。というわけでこの中央アフリカが最近出した記念切手を。 なぜ中央アフリカが? という疑問はあると思いますが…

香港の“兒童郵票 棋樂無窮”と中国の政治的規制

先月、内藤陽介さんとtwitter上でやりとりした香港の“兒童郵票 棋樂無窮”(児童切手、囲碁などのボードゲーム、2020年)をミニシートタイプでようやく購入。 この香港の切手は、児童とボードゲームのほんわか系の切手にみえて、実は高度な政治的判断が加わっ…

ユダヤ新年切手1948-1959と強制収容所解放75周年記念切手

今日は、切手の博物館で少しだけ調べものをしましたが、その際にミュージアム・ショップでイスラエルの強制収容所解放75年切手などを購入しました。ちょうど出かける前に以下に紹介するユダヤ新年の切手についてtwitterでつぶやいていたので、やはりこの切手…

マリのクーデター、『マリ近現代史』、マリの切手(2)

西アフリカのマリでの軍事クーデターによる大統領失脚(現在は健康を理由に出国)、その後の軍部と反政府連合との暫定政府案をめぐる政治的な攻防が繰り広げられてて、政治的安定には遠いようです。 関連記事 マリ反政府連合、軍支持の暫定政権計画を拒否 写…

マルク・ルゲとラオス王国の切手

マルク・ルゲはかってラオス王国時代に発行された切手の下絵を描いた画家として有名です。切手のデザインや彫版をつとめたジャン・フェルパンとの共作は、今も長く切手愛好家たちに愛されていて、僕も切手収集を再開してまもなく、加藤郁美氏の『増補新版 切…

19世紀の写真家ナダールの文化的広がり

ナダール(1820-1910)は、19世紀を代表する写真家として知られています。今年は彼の生誕200年を祝った記念切手が、フランスから出ました。ナダールの試みのひとつである自転ポートレート。これは同じ位置にカメラをすえ、自身が回転盤の上に立ち同じ姿勢を…

竹久夢二

9月16日は、大正浪漫を代表する画家で詩人の竹久夢二(1884年 - 1934年)の生誕日です。というわけで今日の一枚はこの切手を。 1980年に発行された近代美術シリーズ第10集、竹久夢二の代表作「黒船屋」をデザインしたものです。パソコンの画面でいま見ている…

アレキサンダー・フンボルト

9月14日は、自然科学者で地理学者でもあったフリードリヒ・ハインリヒ・アレクサンダー・フォン・フンボルト(1769年 - 1859年)の生誕日でした。フンボルトは兄のヴィルヘルム・フォン・フンボルトと並んで、19世紀の教育・研究に多大な貢献を成し遂げまし…

World Topics

郵趣サービス社のWorld Topicsの頒布会に入会した。アメリカとエジプトとこのWorld Topicsの三つでだいたい毎月の最新の切手を手に入れていくつもりである。国別では、北朝鮮とモザンビークを集めているが、前者は頒布会はあるが政府の制裁対象国なので停止…

震災切手:東京印刷と大阪印刷

1923年9月1日の関東大震災によって通信省の切手倉庫は全焼、印刷局も壊滅的な打撃をうけた。このため各地の郵便切手の在庫払底の危機が招来し、それに緊急に対応するために暫定的な切手発行が企図された。それがいわゆる「震災切手」である。 震災の影響がな…

杉原四郎「幸田露伴について」

このブログのタイトルにもしている『切手の思想家』の著者である故・杉原四郎先生の短文に「幸田露伴について」というものがある。これは人物切手部会会報『人物』に1998年に寄稿されたもので、掲載されたのは手書きの原稿そのものである。最近、切手の博物…