マルク・ルゲとラオス王国の切手
マルク・ルゲはかってラオス王国時代に発行された切手の下絵を描いた画家として有名です。切手のデザインや彫版をつとめたジャン・フェルパンとの共作は、今も長く切手愛好家たちに愛されていて、僕も切手収集を再開してまもなく、加藤郁美氏の『増補新版 切手帖とピンセット』(国書刊行会)を読んでその存在を知りました。それほど熱心な収集対象にはまだなってないのですが、この二年程で目についた範囲で購入してきました。以下は、1957年の民族音楽切手を。
この六枚の切手をみるだけでも、その抒情性と細部の技巧に、まさに切手芸術の粋を見出すことは、誰しも難しくないはずです。切手のモデルは、加藤氏の本によれば、ルゲの息子のダニエルがモデルで、彼が伝統音楽の楽器を演奏する姿が描かれています。もともとルゲは、フランスからの旅人でしたが、ラオスの魅力に取りつかれ、帰国せずに生涯をラオスで送りました。
次の六枚は、古代インドの叙事詩ラーマーヤナの舞踏劇からのもの(1955年)。特に上の三枚の仮面切手の躍動感とエキセントリックな雰囲気は秀逸です。
ラオス王国の人々(1964年)。右端のうつむいた少女の風情が憂いを秘めているかのようです。なおその隣の三人の女性の肖像切手は、ルゲのものではないようです(署名がない)。
万仏節のお祭りを表現した航空切手(1962年)。
ラオス王国が倒れ、1975年にラオス人民民主共和国が成立してから、ルゲはラオスの農村で生活を送ります。彼の切手への関与はラオス王国の間だけのものでした。ラオス自体の切手も、製作面で関与していたフランスとの関係が絶たれる中で次第に味気ないものになりました。ただ個人的にはレーニン切手を収集しているのでその意味での興味はあります。ルゲの名前が記された切手は55種類。そのほぼすべてが切手芸術の精華といえます。またルゲの切手が手に入った段階でこのエントリーに加えていくつもりです。
(付記)
ルゲの代表作であり、内藤陽介さんが『切手が伝える仏像』で紹介したように仏像切手の名品をゲットしたので付記。