切手の思想家たち2020

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

エミリウス・ベレンツェンによる女優ヨハネ・ルイーズ・ハイベルクの肖像画

ヨハネ・ルイーズ・ハイベルク (1812-1890) は19世紀のデンマークの著名な女優で、その自叙伝もいまだに読まれているらしいが(未読)、特にキルケゴールの有名な著作「危機および一女優の生涯における一つの危機」のその「一女優」としての方が日本では馴染みが深いだろう。今日は、そのヨハネ・ルイーズ・ハイベルクを描いた実に美しい2012年のデンマークの切手を。

f:id:tanakahidetomi:20201109014215p:plain

エミリウス・ベレンツェン(1799–1868)の作品をデザインしたもの。デンマークの切手は北欧の切手の大半がそうであるようにレベルの高いものが多いですね。

年賀切手(1935年)

今月の『郵趣』の内藤陽介さんの連載「日本切手150年の歩み」は、日本最初の年賀切手についてだった。

 

f:id:tanakahidetomi:20201031235551j:plain

 

この切手は拡大するとかなり味わいのあるもので、題材は渡辺崋山の「富嶽之図」から採用し、内藤さんの解説だと切手原画には、もともとの崋山の作品に描かれていた雲間に飛ぶ三羽の鳥も描かれていたという。さすがに印刷されたものは、内藤さんが書かれていたように見出すのは難しい。

 

この切手には小型シートがあるが、それはまだ持っていない。今回の連載では当初案にあつた大黒天やねずみの切手デザインが紹介されていたり、当時の日本の海外領からの年賀状やまた銘版付き切手など知らないことが多く楽しめた。

 

ヨハン・シュトラウス2世

今日は、「美しき青きドナウ」などのワルツで知られるオーストリアの作曲家、ヨハン・シュトラウス2世(1825年- 1899年)の誕生日でした。というわけで以下の切手を。

 

f:id:tanakahidetomi:20201025231913p:plain

 

両方ともオーストリアで出された切手で、特に左側の1967年に発行された「美しき青きドナウ」作曲100周年切手は、名品の多いオーストリア切手の中でも好きな一枚です。同曲はもともと1866年の普墺戦争の敗北を経験した国民を慰撫するために作曲されたものですが、当初はあまり人気が出ず、パリ万博で高い評価を得たとのことです(飯島恒雄『四角い500の旅人たち』)。

 

ただ僕には「美しき青きドナウ」は、やはりキューブリックの『2001年宇宙の旅』の宇宙ステーションとそこに向かう宇宙船のワルツとして印象が深いものでもあります。

 

右はシュトラウス2世の肖像切手。未使用のものも持っていますが、ここでは使用済みで渋く。

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/91/Strauss%2C_An_der_sch%C3%B6nen_blauen_Donau.ogg

昭和50年代・平成の使用済み記念切手への関心

今月号(2020年10月)の『郵趣』は、「伝統工芸シリーズで作る競争作品~昭和50年代以降の記念切手で競争作品を作るには~」が大きな特集だった。僕のような子どもの頃に集めていて、また最近再開した人にとっては面白い企画で、いままでの生活では特に注目してこなかった最近の記念切手の特に使用済みへの注目を促す内容になっている。

 

そもそも切手集めの誘因には、母親の収集品をもう一度集めなおすことと、もうひとつは経済思想史研究として故杉原四郎先生(その他の切手に関心のある経済学者たち)の切手への関心を追うものがあった。

 

郵趣』の特集を読んで、ふと、杉原先生から頂戴した封書なりに貼ってある記念切手を集めるのはどうかな、と思い立った。

 

ただ杉原先生から生前頂戴した封書やはがきにも切手が貼ってはいるが、普通切手が中心で、記念切手がほとんどなく、貼ってあってもあまり収集意欲をもたらすものはない。例外は、平成4年(1992年)の水辺の鳥シリーズの一枚である。これを起点にこのシリーズを上記の特集を参考に、いろいろなマテリアルや使用済みのバリエーションを集めている。競争的作品ができるほど集められるかは不明だが。切手研究でも有名だった経済思想史家から頂戴した封書の切手を起点にした収集作品というのもまったく独自な視点なので個人的には面白いのではないか、と思っている。こちらはいずれまたある程度集めた段階でここに報告する予定。

 

残念ながら切手自体のデザインがあまり個人的には好きではなく、ついでなので、昭和50年代以降、しかも子どもの頃にちょうど切手収集をやめた直後に出た船シリーズについても同様に集めている。この切手のデザインは秀逸で、内藤陽介さんも「切手百撰 昭和戦後」(平凡社)の中でとりあげているほど、すぐれた複製芸術の作品である。

 

見本切手でワンペア以外は集めてみました。

 

f:id:tanakahidetomi:20201112021230p:plain

 

使用済みの田型はいくつか集めた程度。

f:id:tanakahidetomi:20201025032848j:plain

 

船シリーズ自体はこんなシリーズ。細部の線が綺麗で、日本の切手もすごいな、と思う。

f:id:tanakahidetomi:20201025032943j:plain

 

最近の政治的なウクライナ切手の面白さ

最近のウクライナの切手に少し関心がある。90年代までは明らかにロシアに切手制作を委託していた可能性があるが、最近は違って自国制作で面白い。この2020年に出たウクライナの団結を示す地図切手は、ロシアに実効支配された東部二州が明記され、さらにドネツク空港の戦いを描いた切手も出てる。

 

やはり政治や経済が強くからんだ切手は興味が深い。

 

f:id:tanakahidetomi:20201025025112j:plain

 

ドイツのヘーゲル生誕250年記念切手

ドイツからヘーゲルの生誕250年記念切手が発行された。

f:id:tanakahidetomi:20201022054252p:plain

 

ヘーゲルの切手は東西に分かれていた時に各々出たのと、戦後のソビエト占領地域でも普通切手で出ている。統一ドイツでは初めての発行で、いままでのヘーゲル切手が比較的厳格で気難し気な相貌だったが、今回はかなり柔和なヘーゲルの肖像をデザインしている。

 

ヘーゲルについてはすでにこの切手専用ブログでもエントリーを書いているのでそれも参照されたい。

ヘーゲル - 切手の思想家たち2020

 

 

 

ルース・アイコ・アサワ

 最近アメリカで出たルース・アイコ・アサワ(1926-2013)の記念切手。素晴らしいシート構成。彼女の代表的な作品である天井から吊るされた造形物など特徴的な作品群と鋭い眼光の肖像写真がシート地を引き締める。戦中の日系人収容施設で始まった彼女の芸術の歩みは、日本ではほとんど知られてないだけに啓蒙的価値大。

ルース・アサワについては以下の記事を参照。

casabrutus.com

以下は有料記事。

米国の「美の巨人」となった日系人アーティストたち|強制収容から75年「トランプ時代」に彼らが示唆するものは | クーリエ・ジャポン