切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

岸惠子さんの映像的ニヒリズム

今日は、岸惠子さん(1932年)のお誕生日でした。おめでとうございます。僕が岸惠子さんを初めて認識したのは、ショーケンと共演した『雨のアムステルダム』でした。もちろん「マリーム」のCMも当時話題でしたが、やはり映画女優としての印象が強いまま今日にきています。個人的には『悪魔の手毬唄』『女王蜂』など市川崑作品が好きです。

というわけで今日はこの二枚の日本切手を。

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日本映画Ⅰ「ハワイの夜」岸惠子鶴田浩二

この切手は日本映画Ⅰという戦後の代表的な日本映画を記念した小型シートに含まれます。以下が全体。

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日本映画Ⅰ:岸惠子の映画は右サイド上から三番目

もう一枚は以下です。

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20世紀デザイン切手10集「君の名は」第二部:岸惠子佐田啓二


現役の人物として切手の題材に二度もなるというのは極めてまれで、人物切手への意識が低いわが国では極めて例外的な方です。それだけ映画や文化への影響が大きいのだと思います。

 

また数年前に、岸惠子さんの『30年の物語』を読んで感銘しました。特にジャン・コクトー鶴田浩二、そして日本のビジネスマンとの出会いと別れを描いた陰影濃い作品群は、その独特のニヒリズムととも印象的でした。影絵や花火に結晶される映像的なニヒリズムとでもいうべき話法です。この点でも他に比較する人物を見出すことが難しい、と思っています。

 

岸惠子さんのご長命とご活躍を願っております。

 

参考:市川崑『女王蜂』再見&岸惠子『30年の物語』https://tanakahidetomi.hatenablog.com/entry/20151102/p1