切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

フーヴァー大統領時代の経済政策への評価:緊縮かニューディールの先駆か?

今日は元アメリカ大統領のハーバート・フーヴァ(1874 -1964)の生まれた日でした。というわけで今日はこれを。アメリカから1965年に出たフーヴァー大統領の死去を哀悼する切手(使用済)です。

 

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フーヴァ大統領といえば、その任期中(1929年3月から1933年3月)における彼の経済政策を巡って、次代の大統領であるルーズベルトの政策と対比させて、大恐慌の対処に失敗した、というのが定説でしょう。ただその失敗の中味についてはいまだに議論があります。

 

ピーター・テミンは『大恐慌の教訓』の中で、主に総需要刺激策の欠落を指摘しています。減税を行った時期もあるのですが、それは大恐慌以前からの計画を実施しただけであり、基本的にメロン財務長官とともに緊縮主義的であったというのが批判の核心です。対して、S.ホロヴィッツは財政政策的には拡大スタンスであり、その失敗は労働市場などへの不適切な介入(市場賃金以上への実質賃金上げなど)が問題で、それはニューディールにも継承される失敗だったという観点です。いわば総供給側の政策介入の失敗に焦点をあてています。

 

テミンもこの実質賃金の下方硬直性を強める政策には批判的で、ホロヴィッツとの違いは総需要刺激政策の可否に絞られます。ただテミンの場合は、さらにフーヴァー政権が期待の転換をもたらすような政策レジームの転換ができなかったことを問題視しています。

その点については、以下のエントリーも参照してください。僕を含むリフレ派の核心部分の説明が含まれています。

 

政策レジーム転換とピーター・テミン『大恐慌の教訓』

https://tanakahidetomi.hatenablog.com/entry/20111011/p1