切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

瀧廉太郎

8月24日は、日本の先駆的で代表的な作曲家、瀧廉太郎(1879-1903)の生誕日でした。瀧廉太郎は、大瀧詠一が指摘したところの日本の音楽の「分母分子論」の枠を破ることを意識的にしていた作曲家です。分母分子論とは、明治以来の日本の音楽が、西洋の音楽=音曲=分母の上に、欧米言語だけを日本語に入れ替えて分子として、構成したものだという大瀧の独自の指摘でした。ただ瀧廉太郎は、分母分子論と同じ問題意識をもっていたことは、海老沢敏が『瀧廉太郎―夭折の響き』(岩波新書)の中で指摘しています。その代表作がいまも愛される「荒城の月」「花」です。というわけで今日はこの「荒城の月」の切手を。

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これは日本の歌シリーズの一枚です。このシリーズは、そもそも瀧廉太郎100周年を顕彰することが契機になっていて、それもあってか「荒城の月」で始まり、「花」で終わる、とても首尾一貫したコンセプトのシリーズです。ここらへんの事情は、内藤陽介さんの『近代美術・特殊鳥類の時代:切手がアートだった頃 1979-1985』やブログの記事を参照してください。

 

瀧が挑戦した日本の音楽の探求と創作は、肺結核の発病、それによる留学生活のとん挫と帰国、そのあまりに短い生によって未完のままです。大瀧詠一の分母分子論から日本の音楽の問題圏を僕なりに『ご当地アイドルの経済学』(イーストプレス新書)でかって詳細に書きました。そこではまた同じ日本の音楽とは何か、を明示的に問題化してチャレンジしている歌手のsayaさんのことも書いていますので、ここでは彼女の歌う「荒城の月」を。

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これは瀧が短い留学生活をしたドイツのライプツィヒに建立されている、彼を顕彰するプレートです。

 

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ご当地アイドルの経済学 (イースト新書)

ご当地アイドルの経済学 (イースト新書)

  • 作者:田中秀臣
  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: 新書
 

 

 

瀧廉太郎―夭折の響き (岩波新書)

瀧廉太郎―夭折の響き (岩波新書)

  • 作者:海老沢 敏
  • 発売日: 2004/11/19
  • メディア: 新書