切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

デイヴィッド・ヒューム

8月25日は、18世紀を代表するイギリスの思想家、デイヴィッド・ヒューム(1711-1776)が逝去した日です。ヒュームは、アダム・スミスらとともに、いわゆる「スコットランド啓蒙学派」のひとりで、しかもその頂点にそびえる高峰です。というわけで今日は、この画像を。

 

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これはスコットランド啓蒙(1730-1790)を記念してイギリスで発行された航空書簡です。横顔の肖像は、経済学者のアダム・スミス、哲学者デイヴィッド・ヒューム、地質学者ジェームズ・ハットン、化学者ジョーゼフ・ブラックの肖像が、エディンバラの大通り、ウォットの蒸気機関、スモールの鋤、エディンバラ国立病院とともに描かれてる18世紀のスコットランドの文化・社会の新しい動きを象徴する内容となっています。

 

残念なことにこの航空書簡はいまだ手元にありません。この航空書簡は、故・杉原四郎先生の『切手の思想家』で知りました。経済学の父といえるスミスやまたヒュームの切手は、今日まで発行されていません。スミスは最近までイギリスの紙幣にその肖像が利用されていましたので、スミスたちの評価が低いということはなさそうなのですが(実際に航空書簡に利用されてますし)、なぜかこのイギリスにとっても、世界にとっても貢献の多い人物の切手がない、という事実はある意味で驚きです。

 

一般に経済学者の肖像切手は乏しいので、経済学の世界的な評価が低いのかもしれませんが(苦笑)。

 

スコットランド啓蒙一般の説明は、山形浩生さんたちが訳してくれた以下が便利です。

スコットランド啓蒙主義 (Scottish Enlightenment)

 

それとヒュームについて、僕自身が書いたものは、現代文化への応用として、以下の論説があります。

biz-journal.jp

 

ヒュームの独特の文化論(細部への洗練が文化の発展を促す)を現代の文脈で説いたものです。個人的にこの論説はとても重要で、好きな内容でした。