8月18日は、イギリスのSF作家ブライアン・W・オールディス(1925-2017)の誕生日でした。オールディスといえば、名作『地球の長い午後』がやはり記憶されるでしょう。僕もこの作品は強い感動を覚えました。数年前に稲葉振一郎、山川賢一氏らとのトークイベントでもオールディスのこの作品に、日本のマンガ『リュウの道』などへの影響として言及したことがあります。
オールディスはSF小説以外にも、SF評論『十億年の宴』や『一兆年の宴』で極めて重要な貢献をしています。その他にも彼の自伝的な要素の色濃いスタブス・シリーズを手掛けています。今回はそのスタブスシリーズの二作目『兵士は立てり』(1971)の舞台のひとつになった日本軍統治下のビルマから発行された「独立記念日切手」(1943)を。
日本軍は1943年8月1日にビルマに傀儡政府を樹立して、そのときに発行したものです。当時、オールディスはイギリス軍の通信兵として、インドそしてインドとビルマ国境の地で激戦に参加していきます。『兵士は立てり』は、三分の二はインドでの娼婦たちとの邂逅やまた主人公の性欲をめぐる体験談が延々と続いていきます。残りの三分の一から本書はがらりと雰囲気を一変します。日本側のインパール作戦の最大激戦地となるコヒマ、特にテニスコートでの苛烈を極める戦場での体験がベースになっていると思われます。いままでインパール作戦の悲惨さは、僕は日本側からみていたので、それをイギリス側の視点で読むことになったわけです。戦場での狂気を本書は性と死の両面から描いています。