切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

エリアス・カネッティ

今日は、ノーベル文学賞受賞者のエリアス・カネッティ(1905-1994)の亡くなった日でした。というわけでブリガリアが発行したカネッティの記念切手(2005年)を。

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カネッティはポピュリズムレイシズム、そしてアイデンティティ政治の問題が世界で噴出する中で、きわめて重要な作家・思想家として再注目されるべきだと思います。

 

彼の小説『眩暈』には、知識人の皮相さと大衆の多様な側面が鮮やかに描かれていると思います。いまから数十年前に読んだときには、本当に嫌な小説だなあ(笑)と思いました。人は自らの「病理」に直面すると嫌悪感を抱くのでしょう。現代に生きる人たちが、自らを省みるときにぜひ参照されるべき作家のひとりではないでしょうか。

 

眩暈(めまい) 〈改装版〉

眩暈(めまい) 〈改装版〉