切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

昭和50年代・平成の使用済み記念切手への関心

今月号(2020年10月)の『郵趣』は、「伝統工芸シリーズで作る競争作品~昭和50年代以降の記念切手で競争作品を作るには~」が大きな特集だった。僕のような子どもの頃に集めていて、また最近再開した人にとっては面白い企画で、いままでの生活では特に注目してこなかった最近の記念切手の特に使用済みへの注目を促す内容になっている。

 

そもそも切手集めの誘因には、母親の収集品をもう一度集めなおすことと、もうひとつは経済思想史研究として故杉原四郎先生(その他の切手に関心のある経済学者たち)の切手への関心を追うものがあった。

 

郵趣』の特集を読んで、ふと、杉原先生から頂戴した封書なりに貼ってある記念切手を集めるのはどうかな、と思い立った。

 

ただ杉原先生から生前頂戴した封書やはがきにも切手が貼ってはいるが、普通切手が中心で、記念切手がほとんどなく、貼ってあってもあまり収集意欲をもたらすものはない。例外は、平成4年(1992年)の水辺の鳥シリーズの一枚である。これを起点にこのシリーズを上記の特集を参考に、いろいろなマテリアルや使用済みのバリエーションを集めている。競争的作品ができるほど集められるかは不明だが。切手研究でも有名だった経済思想史家から頂戴した封書の切手を起点にした収集作品というのもまったく独自な視点なので個人的には面白いのではないか、と思っている。こちらはいずれまたある程度集めた段階でここに報告する予定。

 

残念ながら切手自体のデザインがあまり個人的には好きではなく、ついでなので、昭和50年代以降、しかも子どもの頃にちょうど切手収集をやめた直後に出た船シリーズについても同様に集めている。この切手のデザインは秀逸で、内藤陽介さんも「切手百撰 昭和戦後」(平凡社)の中でとりあげているほど、すぐれた複製芸術の作品である。

 

見本切手でワンペア以外は集めてみました。

 

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使用済みの田型はいくつか集めた程度。

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船シリーズ自体はこんなシリーズ。細部の線が綺麗で、日本の切手もすごいな、と思う。

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最近の政治的なウクライナ切手の面白さ

最近のウクライナの切手に少し関心がある。90年代までは明らかにロシアに切手制作を委託していた可能性があるが、最近は違って自国制作で面白い。この2020年に出たウクライナの団結を示す地図切手は、ロシアに実効支配された東部二州が明記され、さらにドネツク空港の戦いを描いた切手も出てる。

 

やはり政治や経済が強くからんだ切手は興味が深い。

 

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ドイツのヘーゲル生誕250年記念切手

ドイツからヘーゲルの生誕250年記念切手が発行された。

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ヘーゲルの切手は東西に分かれていた時に各々出たのと、戦後のソビエト占領地域でも普通切手で出ている。統一ドイツでは初めての発行で、いままでのヘーゲル切手が比較的厳格で気難し気な相貌だったが、今回はかなり柔和なヘーゲルの肖像をデザインしている。

 

ヘーゲルについてはすでにこの切手専用ブログでもエントリーを書いているのでそれも参照されたい。

ヘーゲル - 切手の思想家たち2020

 

 

 

ルース・アイコ・アサワ

 最近アメリカで出たルース・アイコ・アサワ(1926-2013)の記念切手。素晴らしいシート構成。彼女の代表的な作品である天井から吊るされた造形物など特徴的な作品群と鋭い眼光の肖像写真がシート地を引き締める。戦中の日系人収容施設で始まった彼女の芸術の歩みは、日本ではほとんど知られてないだけに啓蒙的価値大。

ルース・アサワについては以下の記事を参照。

casabrutus.com

以下は有料記事。

米国の「美の巨人」となった日系人アーティストたち|強制収容から75年「トランプ時代」に彼らが示唆するものは | クーリエ・ジャポン

 

 

アンゴラのレーニン切手

アンゴラが1970年代末~80年代に社会主義体制を敷いてた時に発行されたロシア革命70周年を記念したレーニン切手。実はこの切手の存在は見落としてました(笑。今日、切手の博物館で行われた切手バザールでなじみのお店でたまたま見つけました。よかった~。

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ペルー日本人移民120年切手

今月のWorld Topics(郵趣サービス社が行っている切手頒布サービス)は、ドイツのベートーベン誕生250年切手、マカオのタイパ線開業(ゆりかもめと同じシステムで日本企業が国際入札して完成)切手の他に、ここでとりあげるペルーから今年出た日本人移民120年切手。

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今回の解説(切手頒布は、切手を収録した解説つきシートで行われる)では、鎖国以前の1613年に約20名の日本人がペルーの首都リマで生活していたことや、120年前に切手で採用されている佐倉丸に日本人移民が、過酷な農園での労働を強いられることになるペルーに移住した事績が解説されています。日本政府の調査と要求によって現地の農業主の待遇も改善され、その後、移民契約が終わる1923年まで18727人がペルーに移住し、そして現在もペルー社会で一定の地位を得るまでになったと解説されています。日本からの移民とその後のペルー社会での貢献がなければこのような記念切手が発行されるわけもないのは自明です。

 

ペルー社会と日系人社会の歴史については資料も多いのですが、以下のリンク先が勉強になります。全体の俯瞰と個人史。

 

現代ペルーと日系人社会

http://www.tenri-u.ac.jp/tngai/americas/files/newsltrs/32/No32.lecture.yanagida.html

日系ペルー人は敵性国民 ―日系人初のカトリック神父の物語― https://serai.jp/tour/1003532

 

インドのファッション切手

今年出たインドのファッション切手。インド切手を特に集めているわけではないが、人物切手としてはインド国内では知られてはいても海外では(特に西欧目線では)知られていない人たちが多く注目している。独立前後から1970年ぐらいまでは収集していて、一部の例外を除けばそれほど高価でもない。このファッション切手は、切手の博物館で実物をちらみして気になったので購入してみた。大型のシートと同サイズで、なかなか保蔵するのに困るサイズ(笑。額装するのがいい切手かもしれない。

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九枚のそれぞれがインドを代表するファッションデザイナーの作品で、以下がその情報一覧。デザインと()内がデザイナー名の組み合わせ。

1.Vastra (Ritu Beri)

2. Indica Emporia (Wendell Rodricks)

3.Flared Sherwani (Abu Jani Sandeep Khosla)

4.Timeless (Manish Malhotra)

5.Mystical Indian (Rahul Mishra)

6.Embellishment (Ashish Soni)

7.Varanasi Weaves (Ritu Kumar)

8.The Ambika Jacket (Anita Dongre)

9.Classic Jalabiya (Rohit Bal)