切手の思想家たち2020

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

ヘーゲル

今日8月27日は、ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1770-1831)が生まれた日でした。というわけで今日はこの一枚を。東ドイツで発行された1970年の人物切手です。ヘーゲルの肖像の多くは気難しい顔が多いのですが、この切手のヘーゲルは若々しいですね。

 

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ヘーゲルの影響は、経済学にももちろん及んでいてそれを十分にこなすことは、おそらく相当の修練が必要だと思います。以下のような読書ガイドを見つけました。

ヘーゲルに挫折しないための5冊 - 川瀬和也 研究ブログ

 

この中で、岩崎武雄『カントからヘーゲルへ』(東京大学出版会)が挙がってるのが個人的に興味をひきます。僕は大学生の頃に、この岩崎の本を読んでカント、シェリングヘーゲルフィヒテの全体的な流れがつかめました。岩崎の『西洋哲学史』や『カント』も愛読したものです。そして岩崎の『西洋哲学史』を読んだ後には、ヒルシュベルガーの『西洋哲学史』を読んだ方がいい、と哲学を専攻していた知人にすすめられたものです。ただヒルシュベルガーの本は個人的になじめないまま積読です。そしてヘーゲル自身の書いたものは、『精神現象学』の一部分と『法の哲学』の必要な箇所ぐらいしか読んでないですね。

 

ヘーゲルと経済学の関連としては、やはりアダム・スミスに対するヘーゲルのとらえ方に論点があると思います。スミスの実証的な市場システムの帰結を、ヘーゲルは規範的な観点から批判しています。市場では貧富の差が生み出されるが、それを場当たり的に救済するのではなく、国家が道徳的=一般的に救済するように制度化されなければいけない、とヘーゲルは解釈したようです。この制度化は、倫理的な国家に組み込まれた職業団体とでもいうべきものによって実現されます。まるでMMTJGPのようですね(笑)。ここらへんは、ヘーゲルの経済学的側面を詳細に論じた『経済学者ヘーゲル』をもつビルガー・P・プリッダートの貢献が参考になります。

 

例えばネットでは彼の講演録が参考になるでしょう。

CiNii 論文 -  ヘ-ゲルとアダム・スミス:--「偶然性のシステム」としての「見えざる手」〔含 原文〕

 

ヘーゲル弁証法を独自に応用した人物としては、日本では赤松要が重要です。彼は雁行形態論としてアジア地域の経済発展のパターンを、ヘクシャー・オリーンモデルの動学版ともいうべきものとして解説しました。赤松の『ヘーゲル哲学と経済科学』は重厚な社会政策の弁証法的な組み換えを意図した長編です。以前、このブログでまとめました。

赤松要の生存権の社会政策論 - Economics Lovers Live 田中秀臣のブログ

 

また最近では、山脇直司氏がヘーゲルーシュタイン的な枠組みで福田徳三の社会経済学をとらえるという、おそらくプリッダートの問題意識を継承した論点を打ち出しています。

福田徳三研究会&山脇直司「デモクラティック・サイエンスと厚生経済学ー福田徳三のレガシー」 - Economics Lovers Live 田中秀臣のブログ

 

カーステン・ヘルマン-ピラート とイヴァン・ボルディレフ による『現代経済学のヘーゲル的転回』(NTT出版)も興味深いのですが、カーステン・ヘルマン-ピラートのヘーゲル経済学的な観点、劉暁波の視点を、石平氏の著作と結び付けて論じた論説も書きました。

『なぜ中国は民主化したくてもできないのか』〜石平氏の細心かつ大胆な知的冒険〜 | 世の中を見渡すニュースサイト New's vision(ニューズヴィジョン)

 

ヘーゲルはいろんな場面で出くわしますが、彼総体を把握することは依然として大きな障壁ですね。去年では、三枝博音の三浦梅園の弁証法的解釈と、内田義彦との影響関係を講演会で話しました。これからもなにか契機になることがあれば勉強し続けるでしょう。

 

 

 

カントからヘーゲルへ

カントからヘーゲルへ

 

 

西洋哲学史 (教養全書)

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  • 作者:岩崎 武雄
  • 発売日: 1975/01/01
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

経済学者ヘーゲル

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