今日はイギリスの詩人アルフレッド・テニスン(1809-1892)の誕生日でした。というわけで1992年に没後100年を記念して出されたイギリス切手を以下に。テニスンの若い時から、壮年期、そして晩年までの肖像に、彼の詩からインスピレーションをうけた主にラファエロ前派の画家たちの作品が組み合わさった、とてもエレガントな四枚セットの切手です。
どの作家のどの作品かというと、左上はダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの「マリアナ」。マリアナは、シェイクスピアの『尺には尺を』の登場人物で、それに依拠した詩「マリアナ」からロセッティはインスピレーションを得ています。このテニスンのマリアナ像は他の画家たちにも影響を与えていて、ジョン・エヴァレット・ミレイにも同じモチーフの作品がありますね。
個人的にはミレイの「マリアナ」の方が好きです。
右上の切手は、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『影の世界にはもううんざり、とシャロットの女は言う』とテニスンの壮年期の肖像の組み合わせですね。1915年の作品なのでラファエル前派というよりは、その影響にある作品のひとつですね。ウォータハウスの描く女性はとても好きです。シャロットの女は、幽閉された世界から生命を散らしても新しい世界、あこがれる人に会いたいという思いで、宿命的な死をむかえるというモチーフになっています。
左下は、テニスンの詩「粉屋の娘」を主題にしたアーサー・ヒューズの「四月の恋」。テニスンの詩は愛のはかなさを象徴していますが、このヒューズの絵も恋の予感と同時に、その宿命的な終わりを暗示させているといわれてます(足元に散る花など)。
最後の一枚は、ラファエル前派をロセッティとともに代表する「欺かれるマーリン」から採用しています。ちなみに欺かれてるのは、つたで身動きがとれない男の魔術師の方です。アーサー王伝説をもとにしたテニスンの「国王牧歌」が題材として採用されています。
ラファエル前派はウィリアム・モリス、ラスキンらを通じて、経済学とも関係が深いのですが、なかなかその両者の研究がすすんでいない研究のフロンティアですね。