アポリナリオ・マビニ
アポリナリオ・マビニ(1864-1903)は、フィリピンの活動家、第一次フィリピン共和国の憲法を草案したことで知られている。今日、7月23日は彼の生誕日である。
小学生のとき、切手収集をしていて最も興味をひかれたのが、南方占領地、満州などの切手の数々だった。そこには知らない日本の歴史が埋もれているように思えたのだろう。特に南方占領地はいまだに個人的には、全貌がよくつかめない。
マビニの切手に、そういう南方占領地切手のひとつとして出たものがある。
第二次世界大戦時、日本がフィリピンを占領し、やがて(アメリカが既定路線を敷いていた)フィリピンの“独立”を承認した。しかし実態は日本の占領下にあることは明白だった。
マビニとその他二名(バルガス、リサール)の肖像切手を含んだ小型シートを以下に載せる。マビニは下段右側のオレンジ色の切手で、1944年2月9日に発行されたものである。この小型シートの後に、それぞれの肖像切手が単片で発行されている。なお、フィリピンをはじめとした南方占領地の切手事情については、土屋理義氏の『「日専」で読み解くシリーズ 南方占領地』(日本郵趣出版)を参照にしている。
前年10月に“独立”を認められ、フィリピンの民族的な自立・独立に貢献した三名の「英雄」たちを切手にしたことは、日本軍の占領政策の一環として考えるべきことだろう。形ばかりとはいえ、政治的な安定を促す目的で発行を企図されたのだろう。少なくとも日本側からすれば、スペインや米国支配と闘った人物を肖像にすることで、“大東亜共栄圏”のイデオロギーを流布する上で貢献できると思ったのかもしれない。ここらへんの政治的背景はさらに分析する必要がある。
なお、マビニの活躍した時代を含む20世紀初頭までのフィリピンの政治については、内藤陽介さんが簡潔に記述しているので参照されたい(その他にもフィリピンの歴史・情報が多い)
フィリピンの日本占領期の切手はほとんど所有していない(上記含めて数点)。これを機に少し集めてみたいと思っている。時間があればこのブログ記事に加えていくかもしれない。マビニの切手も戦後、フィリピンが本当に独立してからの切手も加えてみたい。
なお以下は、占領下のフィリピン独立一周年を記念して発行された共和国初代大統領のラウレル博士の肖像切手である。
1945年1月12日に当初計画より大きく遅れて発行された。糊もなく、無目打ちで、印刷も不鮮明であり、当時のフィリピンの状況が切迫していることを想像させる。切手発行後の2月3日にはマニラ中央郵便局は業務停止をしている。日本軍と米軍の民間人を巻き込んだマニラ市街戦が始まったからである。
マニラ市街戦については以下を参照
フィリピンで日本軍は何をしたのか? / 中野聡×荻上チキ | SYNODOS -シノドス-
最近のフィリピン経済については以下にまとめた。