切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

ペルー日本人移民120年切手

今月のWorld Topics(郵趣サービス社が行っている切手頒布サービス)は、ドイツのベートーベン誕生250年切手、マカオのタイパ線開業(ゆりかもめと同じシステムで日本企業が国際入札して完成)切手の他に、ここでとりあげるペルーから今年出た日本人移民120年切手。

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今回の解説(切手頒布は、切手を収録した解説つきシートで行われる)では、鎖国以前の1613年に約20名の日本人がペルーの首都リマで生活していたことや、120年前に切手で採用されている佐倉丸に日本人移民が、過酷な農園での労働を強いられることになるペルーに移住した事績が解説されています。日本政府の調査と要求によって現地の農業主の待遇も改善され、その後、移民契約が終わる1923年まで18727人がペルーに移住し、そして現在もペルー社会で一定の地位を得るまでになったと解説されています。日本からの移民とその後のペルー社会での貢献がなければこのような記念切手が発行されるわけもないのは自明です。

 

ペルー社会と日系人社会の歴史については資料も多いのですが、以下のリンク先が勉強になります。全体の俯瞰と個人史。

 

現代ペルーと日系人社会

http://www.tenri-u.ac.jp/tngai/americas/files/newsltrs/32/No32.lecture.yanagida.html

日系ペルー人は敵性国民 ―日系人初のカトリック神父の物語― https://serai.jp/tour/1003532

 

インドのファッション切手

今年出たインドのファッション切手。インド切手を特に集めているわけではないが、人物切手としてはインド国内では知られてはいても海外では(特に西欧目線では)知られていない人たちが多く注目している。独立前後から1970年ぐらいまでは収集していて、一部の例外を除けばそれほど高価でもない。このファッション切手は、切手の博物館で実物をちらみして気になったので購入してみた。大型のシートと同サイズで、なかなか保蔵するのに困るサイズ(笑。額装するのがいい切手かもしれない。

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九枚のそれぞれがインドを代表するファッションデザイナーの作品で、以下がその情報一覧。デザインと()内がデザイナー名の組み合わせ。

1.Vastra (Ritu Beri)

2. Indica Emporia (Wendell Rodricks)

3.Flared Sherwani (Abu Jani Sandeep Khosla)

4.Timeless (Manish Malhotra)

5.Mystical Indian (Rahul Mishra)

6.Embellishment (Ashish Soni)

7.Varanasi Weaves (Ritu Kumar)

8.The Ambika Jacket (Anita Dongre)

9.Classic Jalabiya (Rohit Bal)

 

ジェームズ・クック船長とエンデバー号、オーストラリア大陸上陸250年

「クック船長」の通称で知られるイギリス軍人のジェームズ・クック(1728年- 1779年)がオーストラリア大陸に上陸したことを記念する素晴らしい切手がオーストラリアから出ました。

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ちょっといまさら個人的に驚いたのが、わずか250年前には西洋社会にとっては、ハワイ諸島、オーストラリアなど太平洋のほとんどが未知だったことです。航海法や長期の海上生活のノウハウもクックの時代にかなり発展したようです。切手にはその点も含めて描かれてますが、また彼の航海はさまざまな植物・動物などの「発見」にも結び付いていて、博物学的な観点からの大きな飛躍だったようですね。

 

この切手の解説についてはまた後日記述を加えるかもしれません。

 

 

 

ロダンの切手

 

 ウォリス・フツナ(フランスの海外準県)から1987~92年にかけて発行されたロダンの切手三点。制作はフランスで、さすがの名品。もうひとつは2017年にフランスから出たロダンの切手。切手帳に挟んで、窓から切手本体が出ている。

 

チェコとスロバキアの切手

チェコスロバキアは複製芸術の極致ともいえる切手を発行してきたが、チェコスロバキアに分かれてからも優れた切手を発行し続けている。チェコの最近の美術切手から三種類。スロバキアからはプラハの春を記念した小型シート。この小型シートを郵便に貼りたい(笑

 

伝統工芸品シリーズ

今月号の『郵趣』はあまり僕の関心とかぶってない記事が多いけど、それでも読むといろいろ興味深い。巻頭の1984年から86年にかけて出た伝統工芸品シリーズを利用した切手展に出品して審査をうける競争作品の作り方はためになった。しかしこの時期の日本の切手はほぼ(複製)芸術の領域だな、と思う。