切手の思想家たち2022

世界の切手のうち、思想家・科学者・芸術家を中心に人物切手について自由に書きます。題名は故・杉原四郎先生の『切手の思想家』(未来社)をリスペクトしてつけました。

ナポレオン1世没後200年切手(フランス)

2022年5月のWorld Topics(郵趣サービス社が行っている切手頒布サービス)は、フランスのナポレオン1世没後200年、ドイツのゾフィー・ショル生誕100年、そしてモナコプルースト生誕150年切手である。

 

切手の入荷状況によるのか、最近のワールドトピックスはヨーロッパからのものが大半である。単価をあげてもいいので、多様な国の切手もとりあげてほしい。

 

しかしこのフランスのナポレオン切手は、豪華な仕様であり、肖像画の金ラメの飾りもいいし、下のセントヘレナ島での立ち姿も哀愁があってよし。

 

 

ダンテ・アリギエーリ

今日、2021年9月14日は、『神曲』『新生』で近代の曙をつげたダンテ・アリギエーリの没後700年。ここでは、杉原四郎『切手の思想家』に掲載されていた“生誕”700年記念のダンテの肖像画を含む1965年に発行されたヴァチカンからの四枚組(下段左四枚)を。上段は右からエクアドル旧ソ連、西ドイツ。下段の残り二枚はメキシコ、米国のもの。

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ジョン・ラスキン記念切手(マン島発行)

経済学関連の人物切手で、重要なものがマン島から出ている。ジョン・ラスキンの切手で、マン島とのゆかりを象徴している六枚組のもの。

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ラスキン1871年に聖ジョージ・ギルドという自給自足の共同体を創設し、さまざまな地域での試みに資金提供を行った。その150年記念切手。マン島では、Egbert Rydingsによる織元に資金を提供し、マン島の伝統的な職人芸の保存を試みた。上段左の切手は、その工場の外観。ラスキン自身の肖像は各切手の左端に共通で、この1sTのものには、Egbert Rydingsの肖像がある。

 

上段右側の切手は、ラスキンの有名な標語「There is no wealth but life生命にまさる富はない」が書かれ、それが「社会的正義」をヴィクトリア朝時代に志向されたものとデザインされている。

 

下段左端は、聖ジョージ・ギルドが管理するラスキンランドが描かれている。イングランドのウスターシャー州にあるワイヤ・フォレストにある。今日における環境保護に対するラスキンの貢献を示す。

参照:Ruskin Land in the Wyre Forest - The Guild of St George

 

下段左から二番目は、ターナーの「カレーの桟橋」の一部をデザインしていて、ラスキン美術評論家としての側面を表す切手。ラスキンは『近代画家論』のターナー論を通じて、やがてより積極的に社会評論に接近していく。以下は「カレーの桟橋」の全景も。

 

右から二番目の切手は、ラスキンの知人であったマン島の芸術家: J・M・ニコルソンの「ヴェネツィアへの旅ー芸術家の変身ー」 。ヴェネツィア行きをラスキンはニコルソンにすすめて、1882年にヴェネツィアへ。ニコルソンの簡単な評伝は以下が参考になる。

» John Miller Nicholson: a Manx National Artist iMuseum

 

右端は、ラスキン自身の水彩画で、イギリス沿岸に生息する甲殻類のベルベット・クラブを描いたもの。

 

ラスキンは当時の経済学批判でいまも知られるが、今回この切手の解説を書くために勉強して、本当に活動が広範囲なのに驚嘆した。

 

エジプト切手(国連75年、郵便の日など)

郵趣サービス社の国別頒布会には、アメリカ、エジプト、そしてキューバに入っている。今月はエジプトの配布があったので嬉しい。左から2020年発行の国連75年、電気技術者協会100年、そして2021年発行の郵便の日、男子ハンドボール世界選手権。エジプトの切手は入荷から状態の悪いものがあるが、今回は電気技術者協会100年切手が裏がかなり汚れていた。まあ、しゃあない。手に入るだけましである。

 

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サンマリノの食品のロスと廃棄に関する啓発の国際デー切手

2021年9月のWorld Topics(郵趣サービス社が行っている切手頒布サービス)は、サンマリノの食品のロスと廃棄に関する啓発の国際デー、韓国の柳寛順没100年、そしてフランスのシャルル・ド・ゴール生誕130年の三種類。

 

このうちサンマリノの切手をご紹介。食料危機がコロナ禍で深刻化する可能性はパンデミック初期から指摘されていました。発展途上国やまた各国の貧困層が直撃されると警戒を今も国際機関は強めています。この切手もいわば広義の新型コロナウィルス切手といえるかもしれません。

 

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